日航機墜落から40年──“その後”を語る兄と未来への想像力

2025/08/26 09:28

《日航ジャンボ機墜落から40年》「私は徐々に高校の授業に出なくなり…」“奇跡の生存者”川上慶子さんの兄が綴った“事故後”の人生

https://bunshun.jp/articles/-/81233

奇跡の生存者・川上慶子さんの兄が綴った手記から、記憶の力と報道の役割を読み解く。

ニュース解説：事故から40年、兄が綴った“静かな再生”の記録

1985年8月12日、群馬県・御巣鷹の尾根に墜落した日本航空123便──乗員乗客524人中、奇跡的に生存したのはわずか4人。そのひとりが、当時中学生だった川上慶子さんです。あの日から40年。慶子さんの兄・千春さんが、事故後の家族の歩みを綴った手記が注目を集めています。

手記には、妹が徐々に高校の授業に出なくなったこと、家族を失った喪失感、そして報道陣との距離感が率直に描かれています。千春さんは、事故現場に何度も足を運びながら、妹とともに“記憶”と向き合い続けてきました。父が遺した「一人は万人のために、万人は一人のために」という言葉が、家族の再生の象徴として語られる場面は、静かな感動を呼びます。

この手記は、単なる“感動秘話”ではありません。報道のあり方、記憶の継承、そして心のケアという社会的な問いを私たちに投げかけているのです。事故の「その後」に光を当てることで、報道が果たすべき役割──「忘れないために、どう伝えるか」──が改めて問われています。

ネットの反応：共感と違和感が交錯するSNSの声

川上千春さんの手記が報じられると、SNSではさまざまな感情が渦巻きました。まず目立ったのは、生存者である妹・慶子さんの歩みに対する敬意と感動の声。「40年経っても癒えない痛みを、言葉にしてくれてありがとう」「家族の絆に胸が熱くなった」といったコメントが並び、事故の記憶が今も多くの人の心に残っていることを物語っています。

一方で、報道のあり方に対する違和感も少なくありません。「なぜ今、あえて“奇跡の生存者”を強調するのか」「センセーショナルな見出しが、遺族の気持ちを置き去りにしていないか」といった批判的な意見も散見されました。事故の記憶を伝えることと、個人のプライバシーを守ること──そのバランスに悩む声が多く見られます。

さらに、「記憶の継承」と「報道の配慮」という社会的テーマに関心を寄せる投稿も増えています。「事故を知らない世代にどう伝えるか」「報道は“語り継ぐ”ための手段になり得るのか」といった問いが、静かに広がっているのです。SNSは、単なる感情の発露だけでなく、報道の倫理や社会的責任を考える場にもなっているようです。

もしも：生存者が“語り部”として社会を変えていたら？

もしも川上慶子さんが、事故後に「語り部」としての使命を選び、航空安全や心理支援の分野で活動していたら──そんな仮説を立ててみると、未来の風景が少し違って見えてきます。

たとえば、慶子さんが全国の学校や整備士養成機関を訪れ、事故の記憶と心のケアについて語る講演活動を始めたとします。彼女の言葉は、若い世代の命への意識を高め、整備士たちの安全確認の姿勢を変えるきっかけになったかもしれません。「あの事故を、二度と繰り返さないために」というメッセージは、現場の空気を静かに変えていったでしょう。

やがて、彼女の語りがきっかけとなって、航空業界に新しい安全基準が導入されたり、心のケアを重視する制度が整備されたりする未来が訪れたとしたら──それはまさに、「記憶が命を救う」という言葉が現実になった瞬間です。

もちろん、これはあくまで“もしも”の話。でも、事故の記憶を語り継ぐことが、未来の誰かを守る力になる──そんな可能性に、私たちはもっと想像力を働かせてもいいのかもしれません。